術後二日間は、とにかく痛みとの戦いだった。麻酔がきれてくるころからいろんなところに神経が行き届くようになってくる。
三時間おきくらいに看護婦さんが様子を見に来てくれた。痛くない?我慢しないでね。と、必ず言ってくれる。
パパが、お友達に一斉に報告写メールを送ってくれたから、おめでとうメールが真夜中まで止まらず30件を越そうとしていた。幸いその返事をせっせと送ることで痛みからは多少逃れられていた。・・が、だんだんそうも言ってられなくなってくる。
お腹の中から内臓をえぐられるような、あり得ないほどの痛みが断続的に波に揺られてやってくる。まともに呼吸ができない。気が遠くなる。
二人目の産後は収縮痛が陣痛並みと聞いていた。その通り!陣痛ならまだいい。これから感動が待ってる未知への希望がある。こっちは、感動さんざんした後だから、どうしようもない。痛みをタダで受け入れるしかない。後払いは精神的につらい・・・・。
確かに出産って大仕事だけど、どういう方法が楽かとかあんまり考えないほうがいいね。考えれば考えるほど、終わった後にどれだけ無駄だったかわかると思う。小さい頃、自分がどんな人と結婚したいか考えるのと同じぐらい結果が伴わない確立が高い・・・・。
そうして私も突然の緊急オペで産んだので、立ち会えなかった義母が二日目に飛んできてくれた。
ホントにホントに嬉しそうだった。もともと無邪気な人なんだけど、輪をかけて無邪気だった。
そのうち私の母も偶然合流して病室は異様なテンションになっていった。私は昨日からのことや、赤ちゃんの様子なんかをいろいろと話をした。
かれこれ3時間ほど・・・何も飲み食いできるはずもない術後の私に何度も『食べる?のむ?』と、いろんなものを勧めてくれる二人の母・・。
二人には状況がまったく読めてないようだった。楽しそうにお赤飯をほおばっていらっしゃる・・。『ごめんね。食べられない人の前で。』といいながら。
樹里とパパが来てくれたので、なんとか間は持つようになって少し楽になった。
夕方近くになって、そろそろ帰らないとね。ってはなしになると樹里がメソメソ泣き出した。ベッドのところで私から離れない樹里に、
『ほらほら、ママはしんどいのよ。あんまり長く起きてたらかわいそうでしょ。寝れるときに寝かせてあげないと』
エエーーーーーッ?よくゆうよーーー!って言葉を必死でのみこんだ。
そういって、ばたばたと帰っていかれた。
結局、今日は安静に、あまりしゃべったりもしてはいけないよ。静かに寝ていてね。と言われていたことを最後まで言い出せなかった。言う必要がある事態になるなんてことも考えていなかったもんだから・・。
その夜、忠告を守らなかった私は、前夜、一睡もしていないにもかかわらず、痛みの冷や汗でびっしょりになり、痛み止めを打ってもらった。
三日目の朝、深呼吸ができるようになった。すごい進歩。
人間の体ってすごい。ひとつは、一箇所でも切られるだけで体全部が不自由になる。たかが膝を少し曲げるのに、こんなにいろんなところの筋肉が働くんだ・・。頭をすこし動かすだけにこんなに腹筋を使うんだ・・。
すごいメカニズムだってこと。もうひとつは、一日一日、確実に回復して完璧に正しくもとに戻っていくこと。ひとつひとつ楽になっていく。
『産後の回復は日にち薬やからね。』
という看護婦さんの言葉で、気持ちが楽になった。痛みや不自由さで完全にくじけていたけど、今日より明日・・と思えるようになった。
点滴の針が、ようやく抜けて腕が軽くなった。両手を使えるようになって蒸しタオルで顔を拭くことと歯磨きが毎日の楽しみになった。そして、オシッコの管をぬいてもらうことになった。これで自由になれる・・・・。
流動食もはじまった。離乳食そのものだけど、味のあるものが口にはいるだけで『ありがたや・・ありがたや・・』
パパにメールをうった。
人間、健康第一よ。大切にしないとね。
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